本症例は70才代前半の男性。歯周治療と義歯の再製を希望して来院。
約3か月
精査の結果、下顎右側第一大臼歯遠心根と左側犬歯のみ保存可能と判断。
上顎は元から金属床(白金加金)の総義歯だったが、床は小さく、十分な吸着を得られていないため、再製とした。上下顎とも金属床(チタン)の総義歯を基本とし、十分な吸着を得るために義歯辺縁を封鎖できるように慎重に筋形成を行った。義歯は機能させた時の安定が最も重要であるため、静的な印象採得ではなく、動的な粘膜の状態を印象採得する必要がある。また、高度に吸収した顎堤の場合には、口腔周囲の筋や舌、頬粘膜なとの圧力がニュートラルになるゾーンを確保し、顎堤のみの維持ではなく、解剖学的あるいは生理学的な維持力を積極的に活用すべきである。小さく安定の悪い義歯は、機能的でないだけではなく、顎堤の吸収を促進させてしまうので、注意する必要がある。
下顎残存歯には、磁性アタッチメントを用いたため、義歯の安定性はさらに向上した。
写真は、義歯作成後6年が経過しているが、顎堤の吸収は見られず、また咬合も安定しているため、人工歯の摩耗もほとんどみられない。
コーピング部分は自身の歯のため、虫歯、歯周病になりやすく、よく磨く必要があります。