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全顎的にう蝕傾向が強くカリエスリスクの高い症例であり、義歯も臼歯部のバーティカルストップが不確実であるため、咬合高径の低下を認めた。欠損部位ならびに予後不良歯の抜歯後の補綴は、インプラント治療を希望されたため、全顎的な咬合挙上を含めた咬合の再構築を行う治療計画を立案。インプラント治療により確実なバーティカルストップを獲得し、咬合挙上した対合関係は維持されている。治療前は軟食系の食べ物しか食べられなかったが、現在では通常食となり、健康増進とQOLの向上を図ることができた。
上顎前歯部は、幼少のころに打撲の経験があり、その影響のためか歯根形態が著しく短い(Figs.3a,c)。下顎前歯部には歯列不正(叢生)を認め、その結果、上顎前歯の歯列不正を引き起こしている。下顎前歯部歯列不正は矯正専門医により、スリーインサイザル(4前歯→3前歯)にて改善(Figs.2a-c)、上顎前歯部は、両中切歯を保存不可能と判断し抜歯とし、審美性ならびに負担軽減の観点から、「フラップレスによる抜歯即時インプラント埋入術」を行った(Fig3b)。フラップレスは歯肉を剥離せずに行う方法であるが、本術式のように抜歯後即時にインプラントを埋入する場合には非常に有効な術式である。歯肉を剥離しないため、骨の状況を正確に把握するためにも、3次元的なX線像のCTは不可欠であるが、通常の埋入と比較して、歯肉のロスを最小限にすることができるため、審美的なメリットは大きい。また、術後の痛みや腫れが極めて少ないため、体への負担も少ない方法である。この方法は、インプラントシステムに依存する方法でもある。通常用いられている、ブローネマルクの外部接合方式(エキスターナル・コネクト)では極めて困難な術式であり、アストラやアンキロースなどの内部接合方式(インターナル・コネクト)で可能となる術式である。また、同じ内部接合方式でも、ノーベルのセレクトやITIなどの接合部分がバットジョイントになるものは、同じく歯肉を噛み込みやすく、不向きといえる。治療の結果、上下顎前歯部の機能性ならびに審美性を改善させることができた(Figs.4a-c)。上顎前歯部のインプラントは15年を経過した状態でも、軟組織と硬組織の変化はほとんど見られない。また、一般的にはインプラントーインプラント間の軟組織はフラットになるが、本症例では歯間乳頭状の軟組織も保存され審美的にも機能的に良好な状態が維持されている。
全顎的な歯周治療を希望して来院。義歯を装着していたが治療を機にインプラントに変えたいと希望。静脈内鎮静法下にて上下6本のインプラントを埋入した。上下顎とも顎堤は高度に吸収していたが、上顎洞ならびに下顎管までの距離はあり、十分な長さのインプラントを埋入することが出来た。近遠心的な位置も理想的な位置に埋入できたため、審美的にも機能的にも良好な上部構造体を装着することが可能であった。
垂直的な咬合関係は、著しい咬耗とそれに合わせた歯科治療のため、咬合高径が低くなっている(Fig. 1)。スピーの彎曲は過大(Figs. 1- d.f)となっており、正面観では下顎前歯部は見えない(Fig. 1- e)。クライアントはブラキサー(歯ぎしりとくいしばり)であり、通常の補綴治療では、クライアントが希望する“人生最後の歯科治療”とすることはできない。 口腔衛生状態も不良(Figs.1- c.g)であり、全顎的な補綴治療は歯周病治療の一環として行うこととなった。
“人生最後の歯科治療”にこだわり、口腔衛生指導、全顎的修復ならびに補綴処置、咬合挙上、インプラント、下顎前歯部の歯列矯正を約2年半をかけ行った。クライアントの年齢は65才であり平均余命から逆算して15年間耐える治療ということで治療を行う。また、口腔衛生管理のしやすさやブラキシズムの除去を考慮した治療も立案された。結果、欠損部分については義歯やブリッジではなく、インプラント治療(11,37,36,46)とし、確実な咬合挙上を行うことで、顎位の安定を図る。また、咬合挙上を行ったことで下顎の叢生に対しても歯列矯正を行い、適切なアンテリアガイダンスを付与。側方運動時には犬歯ガイドを再構築し、ブラキシズム解消を行った。 写真(Fig. 2)は、メインテナンスに移行後、約1年後であるが、術直後の口腔内が維持され、非常に良好である。術後10年のメインテナンス中、上顎右側側切歯部部(12)を強打し、ブリッジ陶材部が破損。それを機にインプラントに再治療している(Fig. 3)。
下顎義歯をインプラントに変えたいと、紹介にて来院。アタッチメントが装着されてあった右下犬歯は予後不良のため抜歯となった(Fig. 1赤矢印)。顎堤は比較的良好に保たれているため、インプラントを6本埋入し標準的な待機期間(3ヵ月)を経た(Fig. 2)。ヒーリングアバットメント周囲の歯肉の治癒が完了した後(Fig. 3)、固定性の上部構造体を作製した(Fig. 4, 5)。
全顎的歯周病治療を行うが、要抜去の歯の抜歯になかなか同意が得られなかったため、インプラント治療により天然歯と同程度の機能回復を期待できることを説明し、抜歯に同意していただいた。左下臼歯部は抜歯適用にもかかわらず、紹介元でも10年来抜歯を拒み続けたため、顎骨は高度の吸収を起こしている。クライアントは歯科恐怖症で、観血的処置に著しい抵抗感を持つため、鎮静(セデーション)下にて、インプラント埋入を行った(Fig.1)。通法どおり、待機期間を設け、インプラント2次手術を行った後(Figs.3,4)に、印象を行い、アバットメントならびにフレームの試適を行う(Figs.5,6)。試適時の口腔内インデックス採得(Fig.6)は、舌側サイドスクリュ方式においては重要な意味を持つ。通常インプラントの装着方式は、簡便であるためセメント方式が選択される。このセメント方式 であれば、アバットメントとフレーム間に適度のセメントスペース(30-50μm)が設けられ、技工誤差を吸収することが出来るが、サイドスクリュー方式では、セメントスペースは存在しない。そのため、サイドスクリュー方式では、印象材や模型材の歪かな誤差を吸収することが出来ない。これゆえ一般的な術者と技工士はセメント方式を採択する傾向にある。しかし、サイドスクリュ―方式であれば、術者可撤式のため、歯冠部分の破損やアバットメントスクリューの緩みに対して、簡便に対処することができる。セメントの残存やセメントスペースに起因する術後トラブルを回避することもできるため、メリットは大きい。サイドスクリュー方式が持つメリットは、術式が煩雑で高コストであるというデメリットを考慮しても、そのデメリットは術者と技工士が努力すれば解決できる問題であるため、当院のケースは可能な限りサイドスクリュー方式を用いている。 術者、衛生士、技工士そして患者、4者の努力の結果、審美的ならびに機能的なインプラントに仕上げることができた(Figs.7,8)。
右上顎中切歯の不調を訴え来院された(Figs.1,2)。患歯は幼少時の打撲より歯根吸収を起こしており、また根尖病巣もあることから抜歯の適応となった(Figs.3,4)。抜歯に際し、インプラントを即時に埋入する計画を立て、同時に自家骨を移植した(Figs.4,5)。同日に暫間補綴物である人工歯を装着し審美ならびに機能を回復した(Figs.6,7)。半年の治癒期間を待った後(Fig.8)、2 次オペに移行しようとしたが、クライアントの都合により延期され、1次手術後1年4か月後(Fig.9)に、2次手術を行った。良好であった周囲組織は、その後、何度か暫間補綴物が脱離したため、吸収してしまっている(Fig.10)。 2次手術時に、唇側歯肉の調整を行い、上部構造体にSシェイプを付与し、隣在歯との歯頸線をそろえた(Fig.11)。審美的ならびに機能的なインプラントに仕上げることが出来た。
某歯科医院より前歯の治療を依頼された(Fig.1)。患歯は破折して久しく、著しい骨吸収(Fig.19)が見られたため、抜歯即時インプラントの適応にはならない。注意深く抜歯を行ったところ、唇側の骨はなく(Fig.2)、嚢胞を摘出すると大きな骨欠損が認められた(Fig.3)。抜歯後3ヵ月程度の治癒期間を経て(Fig.4)、インプラント埋入を行ったが、骨欠損が大きく、審美的な障害が懸念されたため(Figs.5,6)、骨増生を併用した(Figs.7,8,9)。再び埋入後6ヶ月の治癒期間を経て(Figs.10,11,12)、2次手術を行い、設置されたゴアテックス膜下部には十分な骨増生を認めたため骨整形を行い(Figs.13,14,15)、ヒーリングアバットメントを設置した(Fig.16)。その後、通法どおり上部構造体を作製(Fig.17)し、メインテナンスに移行して、 現在3年が経過した(Fig.18)。審美的にも満足でき、また存在した骨欠損も回復し、隣在歯の歯根膜腔も回復している(Fig.20)。
全顎的な補綴治療を希望し紹介を受けた。全顎的に軽度から中等度歯周炎があり(Fig. 1, 2)、歯周病治療と共に義歯をはずしインプラント治療を行う計画を立案した。歯周病治療のみならず、装着されている補綴物は不良で、咬合平面も不ぞろいであるため、全ての補綴物は撤去し、根管治療も全て再治療を行う。義歯の装着されていた顎堤は、比較的良好で、インプラント治療に最適な骨量であった(Fig. 5)。通常埋入によりインプラントを行い、適正な咬合平面を付与した(Figs. 3, 4, 6)。
上顎は3歯残存していたが、2歯は保存不可能と判断し抜歯となった(Fig.2)。抜歯に際し、顎堤の吸収を最小限にするために抜歯即時埋入とした。診断用ワックスアップからサージカルステントを作製し埋入位置を決定したところ(Fig.3)、右上側切歯部のインプラントは頬側の骨の支持がまったくない(Fig.4)。そこで、自家骨(Fig.5)と吸収性のコラーゲン膜(Fig.6)を用い、GBRを併用してインプラントを埋入した。2次手術まで注意深い経過観察を行い(Fig.7)、印象採得を行い(Fig.8)、咬合床を作製(Fig.9)。咬合床により咬合採得を行った(Fig.10)。バイト決定の後、フレームとアバットメントを口腔内で試適し(Fig.11)、パターンレジンにてインデックスを採得する(Figs.12,13)。この作業は、精度の高い補綴物を作製するためには不可欠である。ろう着の後、陶材の焼付が終了した上部構造体には様々な配慮が施されている(Figs.14,15)。舌側からのサイドスクリュ、適度で均一な下部鼓形空隙、歯肉辺縁の陶材仕上げ・・・これら一つ一つを丁寧に仕上げることにより、より完成度の高い上部構造体を口腔内に装着することができる(Figs.16-21)。今後は右上臼歯部と左下臼歯部のインプラント治療を行う予定である。
欠損部は数ヶ月前に歯内歯周病変により紹介元歯科医院で抜歯している(Figs.1,4)。最後臼歯部へのインプラント治療においては特に注意が必要な点がある。歯列の中で顎関節に最も近い最後臼歯は、歯の中で最大の咬合力を受けることになる。当然、その場合には、インプラントにおいても、物理的な咬合負担能力が高いものを選択するべきであるといえる。精査の結果、インプラント治療でも可能との判断から、1次手術を行ったが、抜歯窩の骨の治癒はほとんどしておらず(Fig.1)、理想的な位置にインプラントを埋入する(Fig.2)と周囲には2-5mm程度の空隙が出来てしまっている(Fig.3)。そのため、ボーンスクレイパーにて自家骨を採取し(Fig.8)、ゴアテックス膜を用いた骨再生療法を併用してインプラントを埋入した(Figs.5-7,9)。約4ヶ月の治癒期間を待つが、その間、ゴアテックス膜の露出は認められなかった(Figs.10,13)。2次手術の際(Fig.11)、膜を除去するとその下部のインプラント周囲には新生骨を認める(Fig.12)。新生組織の調整を行った後(Fig.14)、ヒーリングアバットメントを装着し、縫合した(Fig.15)。2次手術後2週間で抜糸を行うが治癒は良好で、十分な角化歯肉が保たれている(Fig.16)。歯肉の治癒後通法どおり印象を採り(Fig.17)、上部構造体を装着した(Figs.18-21)。
本症例は50歳代の女性で、臼歯部の欠損補綴を希望して某歯科医院へ来院。ブリッジの支台にパーフォレーションがあり、支台歯として不適当の指摘を受けインプラント治療を検討するため紹介を受けた(Fig.1)。パーフォレーション部は比較的深い位置であり抜歯適応となるが、MTAにて閉鎖。その後良好な経過を見るが、ブリッジの支台として使用していくには不安があるため、欠損部はインプラントとした。欠損部の骨量に問題はなく、通法どおり埋入し、3ヵ月の治癒を待ち(Fig.2)2次手術を行った。付着歯肉のロスを防ぐため、2次手術はフラップレスにて行う。このフラップレスはどのインプラントシステムでも出来るわけではなく、アストラかアンキロースで可能な術式である(Figs.3,4)。フラップレスにて付着歯肉の喪失を最小限にしたため、十分な角化歯肉の温存をすることが出来(Fig.5)、また、審美的で機能的な上部構造体を装着することが出来た(Fig.6)。初診時の欠損部は凹状であったが(Fig.7)、インプラント治療により、歯肉の形態もより自然となり(Fig.8)、審美的にも機能的にも良好な歯を復元することが出来た(Fig.9)。インプラント手前の歯はオールセラミックスによる修復としている。