本症例は40才代前半の男性。歯周治療と上顎局部床義歯の修理を希望して来院。
約3か月
嘔吐反射の強いケース。精査の結果、上顎は保存可能歯を磁性アタッチメントに変え、オーバーデンチャーを作製することとした。本症例は嘔吐反射が強いため、無口蓋デンチャーとした。本来、無口蓋デンチャーの作製は、技工士の熟練もさることながら術者の高度な印象採得技術も要求される。口蓋部分の吸盤効果が薄れるため、口腔周囲の筋や舌、頬粘膜などの圧力がニュートラルになるゾーンを積極的に活用したり、ポストダムの付与も特殊な形態にする必要がある。しかし、本症例のように残存歯に磁性アタッチメントを用いることができれば、比較的作製は簡単である。ただし、アタッチメントを用いることができても、義歯の安定に用いられる全ての要件を最大限に義歯に付与するということは基本と考える。
写真は、義歯作製後15年を経過しているが、義歯および残存歯ともに良好に管理されている様子がわかる。
コーピング部分は、虫歯や歯周病になりやすく、厳密な口腔衛生管理が必要になる。頚椎のMRI撮影時に障害陰影が発生することがある。