30代女性
約8カ月
数年前に4前歯を補綴したが、2ヶ月前より、右上中切歯にフィステル (瘻孔)を認めるようになった(Fig.1)。精査の結果、歯根も外部吸収して短くなっており、また破折線、歯根嚢胞も確認できたことから保存不可能と判 断した(Fig.4)。抜歯後の補綴を相談したところ、インプラント治療を希望され、抜歯即時インプラント埋入を行った(Fig.5)。抜歯即時インプラ ント埋入では、抜歯窩の徹底した掻爬ならびに無菌化が必須である(Fig.3)。クライアントのQOLまたは術後の審美性確保のために抜歯即時インプラント埋入後、即時にプロビジョナルレストレーションを調整した(Fig.6)。抜歯即時にプロビジョナルを調整し、もとあった歯肉の形態を温存することによ り、良好な歯肉形態を得ることが出来る(Fig.7)。1次手術をフラップレスで行い、極力、周囲組織の退縮を抑えることができたので、2次手術もフラッ プレスで行う(Fig.8)。この2次手術をフラップレスで行う方法はどのインプラントシステムでも行うことが出来るわけではない。本症例にはアストラ テックインプラントを使用。
再び、エマージェンスプロファイルを温存するために、プロビジョナルをハイポリッシュし調整する (Fig.9)。ラボサイドへ色調のオーダーをするが、両側切歯は標準的な色調となっているため、比較的色の調和は簡単である(Fig.10)。抜歯即時 インプラント埋入からほぼ7ヶ月。歯肉形態の変化を最小限に抑えた情報を正確にトランスファーする(Fig.11)。インプラント部も重要だが、隣在歯の マージン下部最低0.5mmの印象が印記されていないと、ラボサイドへ正確に情報が伝わらない(Fig.12)。歯科医師のパーフェクトな仕事にのみ歯科 技工士もパーフェクトな仕事を提供することが出来ることを常に念頭に置くことは大事なことである。若干の歯肉退縮を改善するため、歯頸部をレスカウンター (Sシェイプ)にし(Fig.13)、約一ヵ月後には歯肉のせり上がり(クリーピングアタッチメント)がおきてきた(Fig.14)。更に1ミリ程度歯冠 側に歯肉を上げるために、レスカウンターを与え(Fig.15)、最終的にインプラントと天然歯の調和が取れ満足のいく結果となった。
通常のインプラント治療と比べ、本術式は歯肉を剥離せずに埋め込みを行うため、隣在歯の損傷や唇側への穿孔などのリスクが高まります。手術後のダウンタイム(痛みや腫脹が起こる期間)は約3-4日です。