40代女性
約8カ月
本症例は40歳代の女性で、下顎臼歯部のインプラント治療を希望して紹介を受けた。欠損部は高度の骨吸収を認め(Fig. 1)、幅には問題がない(Fig. 2)が、下顎管までの距離が少なく十分な長さのインプラント埋入するには、垂直方向に約3mmの骨増生(GBR)が必要となった(Fig. 3)。1次手術時に採取される自家骨を用い(Fig. 4)、ゴアテックス膜を併用し骨増生を行った(Fig. 5)。この際、内部のボリュームが増えるため、フラップ弁の閉鎖は困難となる(Fig. 6)ため、減張切開を入れ(Fig. 7)、創面を完全に閉鎖する(Fig. 8)。骨増生のポイントは、減張切開と縫合にあるので、丁寧な処置が必要となる。術後2週間で抜糸を行うが、創面の裂開がないかをチェックする(Fig. 9)。1次手術後数ヶ月で2次手術と同時に、ゴアテックス膜を除去(Fig. 10)。直下には新生組織を認める(Fig. 11)。カバースクリュー上の新生組織を除去しヒーリングアバットメントを設置。付着歯肉の確保を目指し、縫合は緊密に行わない(Fig. 12)。2週間後に抜糸を行うが、ヒーリングアバットメント周囲に角化歯肉を認める(Fig. 13)。上部構造体は高精度の舌側サイドスクリュー方式を採用しているため、フレームとアバットメントの試適を必ず行い(Fig. 14)、口腔内でろう着用のインデックスを採得する(Fig. 15)。口腔内のろう着用インデックスは非常に重要で、この作業により印象材や模型材の数μmの誤差を解消することができる。舌側サイドスクリュー方式では、セメント方式と違い、僅かな誤差(数μm)で装着が出来なくなるので注意が必要である。良好に管理されたヒーリングアバットメント周囲の歯肉に炎症症状はなく(Fig. 16)、また、ヒーリングアバットメントにもプラークの付着は極めて少ない(Fig. 17)。審美的にも、機能的にも十分な上部構造体が装着された(Fig. 18)。
下顎のインプラントは下歯槽神経に障害を及ぼした場合、数か月の知覚異常が生じる場合があります。またこの術式は術後に腫れが大きく出やすく手術後のダウンタイム(痛みや腫脹が起こる期間)は約2週間です。