30才代の女性。上顎前歯齢の審美障害を訴え来院
約1か月
数年前、左上切歯には某歯科医院にて施術された陶材焼付鋳造冠が設置されており、また、右上切歯と左右側切歯は度重なるコンポジットレジン充填により審美傷害を呈している(Fig.1-2)。クライアントは切歯部の翼状捻転も気になっていた(Fig.3)。数年前に左上切歯に陶材焼付鋳造冠を施術された際に、右の翼状捻転に合わせて、左の陶材焼付鋳造冠も捻転して作製されたことも不満で、今回はすべて改善したいと希望。そこで、左上切歯の陶材焼付鋳造冠とメタルコアを除去後、ファイバーグラスコアをセット。左右中切歯は冠タイプのオールセラミックス(エンプレス)修復とし、左右側切歯にはラミネートベニアとした。オールセラミックス修復は極めて自然感のある仕上がりになるのが特徴であるが、今回は、左上切歯部にファイバーグラスコアを用いたため、失活歯(神経のない歯)でありながら、隣在歯の生活歯との調和がとれた仕上がりになっている(Fig.4)。また、補綴的に翼状捻転も修正され、満足のいく処置ができた(Fig.5)。
通常、失活歯にはコアを入れるが、その素材は金属となるのが通常である。天然歯(処置をしてない歯)は光を通す。光は歯を透過しながら、乱反射と散乱をして、歯としての色を出してくるが、金属のコアを入れられた歯はその現象が乏しく、結果、不自然な色調になりがちである。特に、歯冠から入った光が歯根方向へ抜けて行かなくなるため、歯肉の色が暗くなり、歯肉は健康であるのに、健康な歯肉に見えなくなる審美障害が発生する。本症例においては、左上切歯の歯肉辺縁部ではマージン不適があったため歯肉の炎症が見られたが、付着歯肉からMGJにかけての歯肉も、紫色を呈し、審美的にも良好とは言えなかった。
オールセラミックスクラウンはメタルクラウンと比較して、材料の厚みを確保するために歯を削る量が増えます。
ラミネートべニア形成後は稀に神経の症状(痛みなど)が出ることがあります。