本症例は50歳代の女性で、全顎的歯周病治療と欠損補綴を依頼され紹介を受けた(Fig. 1)。
約6カ月
全顎的歯周病治療を行うが、要抜去の歯の抜歯になかなか同意が得られなかったため、インプラント治療により天然歯と同程度の機能回復を期待できることを説明し、抜歯に同意していただいた。左下臼歯部は抜歯適用にもかかわらず、紹介元でも10年来抜歯を拒み続けたため、顎骨は高度の吸収を起こしている。クライアントは歯科恐怖症で、観血的処置に著しい抵抗感を持つため、鎮静(セデーション)下にて、インプラント埋入を行った(Fig.1)。通法どおり、待機期間を設け、インプラント2次手術を行った後(Figs.3,4)に、印象を行い、アバットメントならびにフレームの試適を行う(Figs.5,6)。試適時の口腔内インデックス採得(Fig.6)は、舌側サイドスクリュ方式においては重要な意味を持つ。通常インプラントの装着方式は、簡便であるためセメント方式が選択される。このセメント方式 であれば、アバットメントとフレーム間に適度のセメントスペース(30-50μm)が設けられ、技工誤差を吸収することが出来るが、サイドスクリュー方式では、セメントスペースは存在しない。そのため、サイドスクリュー方式では、印象材や模型材の歪かな誤差を吸収することが出来ない。これゆえ一般的な術者と技工士はセメント方式を採択する傾向にある。しかし、サイドスクリュ―方式であれば、術者可撤式のため、歯冠部分の破損やアバットメントスクリューの緩みに対して、簡便に対処することができる。セメントの残存やセメントスペースに起因する術後トラブルを回避することもできるため、メリットは大きい。サイドスクリュー方式が持つメリットは、術式が煩雑で高コストであるというデメリットを考慮しても、そのデメリットは術者と技工士が努力すれば解決できる問題であるため、当院のケースは可能な限りサイドスクリュー方式を用いている。
術者、衛生士、技工士そして患者、4者の努力の結果、審美的ならびに機能的なインプラントに仕上げることができた(Figs.7,8)。
下顎のインプラントは下歯槽神経に障害を及ぼした場合、数か月の知覚異常が生じる場合があります。手術後のダウンタイム(痛みや腫脹が起こる期間)は約1週間です。